1月18日は「初観音」で、今年最初の「観音様(観世音菩薩)」の「縁日」です。この日は、観音様とのご縁が結べる日で、各地の寺院は大いに賑わいます。さて、昔々インドの南に「早離(そうり)と即離(そくり)」という幼い兄弟が居ました。ふたりの両親は、すでに亡くなっています。ある日悪い男が、「お前たちの家をくれたら、両親に会わせてやろう」と兄弟を無人島へ連れて行き、置き去りにしてしまいました。兄弟は騙されたのです。飢えと渇きで、幼いふたりはどうすることも出来ず、死を待つことしか出来ません。弟は「僕たちは、両親を亡くし、人に騙され、人知れず死んで行くなんて」と嘆き悲しみますが、兄は「僕も最初はそう思った。でも、僕たちは親と別れる悲しさ、人に騙される悔しさ、そして飢えと渇きの苦しさを、他人の何倍も知ることが出来た。今度生まれ変わる時は、悲しみに嘆く人々を救おう。他人を慰めることで、自分も慰められるんだよ。」 それを聞いた弟の心にも何かが目覚めました。兄弟は、ほどなく静かに息をひきとります。その死顔は、とてもおだやかで微笑んでいたと言います。この兄弟が生まれ変わって、兄が「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」、弟が「勢至菩薩(せいしぼさつ)」になったと言う、「華厳経」の説話です。観音様は、あらゆる人を救うために、老人、子ども、兵士、僧侶、鬼、妖怪、天女など、臨機応変に三十三種類の姿に変身します。これを「観音三十三身」と言います。「西国三十三ヶ所」や「三十三間堂」「三十三観音」などの数字は、この「三十三身」に由来しています。(2025.1/15) |