今からちょうど200年前、江戸後期の文政8年(1825)7月26日、江戸・日本橋人形町の歌舞伎小屋「中村座」で、「東海道四谷怪談」が初演を迎えました。浪人「民谷(たみや)伊右衛門」に毒殺された21歳の妻「お岩」の復讐話で、不義密通をはたらいた男女が殺されたという実話をヒントに、歌舞伎狂言作家の四代目「鶴屋南北(つるやなんぼく)」が書き下ろしたものです。お岩が伊右衛門に飲まされたトリカブトの毒薬のために、顔半分が醜く腫れ上がり、大量に抜け落ちる髪をクシで梳(す)きながら悶え苦しむ場面が凄惨で、観劇した江戸の町民を震え上がらせました。しかし、「お岩」は実は毒によるものではなく、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」を発症したのではないかという説があります。子供の頃に「水ぼうそう(水痘)」に罹(かか)ると、その「水ぼうそうウイルス」が「こめかみ」あたりにある三叉神経に潜伏します。そして、加齢や極度の疲労、激しいストレスなどで「免疫機能」が低下すると、そのウイルスが再び目覚めて活動し「帯状疱疹」を発症するのです。「お岩」の症状は、水ぶくれで痛々しい浮腫、皮膚の脱落を伴う大量の脱毛で、重症化した「帯状疱疹」の症状として少しも矛盾しないそうですよ。「鶴屋南北」は、どこかで「帯状疱疹」の女性を見てこの話を思い付いたのかも知れませんね。(2025.7/17 掲載遅延をお詫び致します) |