1. 加藤真美「タタラ破れ盌」 長径12.5×高10.0〈会員〉
▶審査員講評〈石﨑泰之氏〉
惑いのない大胆な表現性がこの茶碗の魅力だ。腰から口縁へ走るタタラの合わせ目が描くたおやかな曲線と、その口縁の先端で波瀾のごとく翻る土の奔放な質感とが、かたちに力強い動勢を添えている。一見オブジェを想わせる造形だが茶道具としては十全のうつわであり、制約の多い茶碗づくりの限界をするりと超えてみせた、作り手の非凡な感覚と力量がよく表れている。




2. 清水 剛「塩窯茶盌」 長径12.5×高10.0
▶審査員講評〈正村美里氏〉
伝統の地、丹波での薪、強還元による塩窯の作。盌に掛かった塩釉が斑に抜けて藍地に白い花を咲かせている。沓形の器形は、内にすぼまる口縁部から高台まですっきりとしたカーブを描く。この形状が、ともすれば過剰になりがちな窯変の印象を軽やかにしている。高台脇の釉溜りなど、生来のセンスによりバランスよく仕上げている。




3. 齋木俊秀「織部彩文茶盌」 長径12.5×高10.0〈会員〉
▶審査員講評〈正村美里氏〉
「織部」の名を冠した色、かたち共に穏やかな中にも華やかさを醸す盌。掻き落としの線描で描いた立沸を黄色、赤志野、織部で加彩し、胴紐状に入れた線で文様をずらすことで全体を引き締めている。見込みにはたっぷりと緑釉が掛かり、外との対比を見せる。志野や黄瀬戸、織部の要素が散りばめられた現代の美濃焼となっている。




4. 鈴木秀昭「色絵釉裏金彩光輝茶碗」 長径12.5×高10.0
▶審査員講評〈石﨑泰之氏〉
黄(金)色を主調とするうつわの内外面に、細線と上絵付けで「光輝」を意図したオーナメントがびっしりと描き込まれた明るくにぎやかな茶碗。その周密さたるや作り手の持論を愉しむ饒舌ぶりが想い起こされるほどだ。同じ意匠を三方に展開する構成だが、微妙な違いやにじみといった手技の痕跡が、シャープで緊張感の漂うこの茶碗の見処となっている。




5. 小割哲也「織部茶盌」 長径12.5×高10.0
▶審査員講評〈隠崎隆一氏〉
茶の湯は日本に於いて人と人の間に存在する交感の世界である。そこには多様な美術文化が潜んでいる。特に茶盌は人が手にし、口にし、個人の感性に訴える興味深い器である。 大胆な面で構成されたこの織部茶盌は、武士が出陣する際に立膝や胡座でも片手で飲める形で力量がある。横置き焼成した貝の痕跡もこの形には違和感を感じない。飲み口もしっかり設けてあり作者も作り手であり使い手の意識を感じる。


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6. 野原美恵「雲母彩釉はじき茶碗」 長径12.5×高10.0
▶審査員講評〈石﨑泰之氏〉
「侘び」や「渋さ」といった茶道具に抱かれてきた従来の美意識からみごとに脱却した、可愛らしい茶碗だ。しかも内面は、ぷっくりと盛り上がった、濃淡あるピンク色の釉で描かれた花柄がぐるぐると渦巻いている。現実に即した美を茶器に求め、遠い過去からより近い親しさに美の本質を感じようとするのなら、本作のように、現代人は自らの生活感情にもっと厚く美を観じなければならない。




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7. 井上昌崇「碗」 長径12.5×高10.0
▶審査員講評〈正村美里氏〉
鈞窯の銅釉を研究する作者ならではの紫紅色の盌は、ゆるやかな楕円を描き、細やかな窯変が妖艶さをも漂わせる。まるで桔梗の花が開いたかのように優美な曲線で立ち上がり、高台には同じく花弁の軸を思わせる切り込みが入る。口縁部には釉の重ね掛けによる覆輪が美しく現れ、釉、器形、焼成共に静謐にコントロールされた作。




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8. 滝口大喜「蕎麦切釉茶盌」 長径12.5×高10.0
▶審査員講評〈石﨑泰之氏〉
堂々とした姿の茶碗だ。腰を強く張り出して、見込みを広々と拵えているのが好ましい。山脈の連なる峰々を遠望するかのような峻険な口づくりは、世間から離れた深山の幽邃を想起させるが、マット調の釉色とも相俟って枯淡な気分を醸し出してじつに渋い。惜しむらくは、高台の造形に胴部のそれに見合う力強さが足りていない。






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